「なぜパワハラをしてしまうのか」の背景

今回は、なぜパワハラをしてしまうのかの背景スタンスとして、「Deficit Based Approach」という考え方を説明します。

「Deficit Based Approach(デフィシットベースドアプローチ)」とは欠点や欠陥に注目をした解決方法(Solution)で、別名「問題解決型アプローチ」と言います。何が問題か、どこが問題なのか、なぜ発生しているのか、を突き詰めていく方法で、「なぜなぜ分析」等の方法がありますね。企業で働いている方にとって、これは普通の方法と言うか、これしか知らないと言う方も多いのではないでしょうか。

 

ところが、人間はできていないことを指摘されるとそれだけで嫌な気持ちになりますし、落ち込みます。また、Whyを使った質問(例:なんでそんなことしたの?)をされると、追及されているように思い、「言い訳」を始めることになります。そのプロセスでパワハラと言われてしまうことも出てくるのです。

 

これに対して、できていることに焦点をあてた解決方法(Solution)を「Strength Based Approach(ストレングスベースドアプローチ)」と言います。別名ポジティブアプローチと言います。できていることは何か、すでに手に入れている部分はどうか、ゴールはどこかなどを明確にしていくことで成功を手に入れていく方向です。

 

そのプロセスでは、当然のことながらほめたり、勇気づけをしたり、応援をしたりの言葉も増えますので、話をしていると元気になってエネルギーがあがります。そこでパラダイムシフト(発想の転換)が起こったり、やる気が高まって行動力が高まったりするわけです。

 

コーチングの質問や傾聴を間違えてしまうと…

コーチングマネジメントは本来、このポジティブアプローチが根底にあるはずです。ところが、コーチングの質問や傾聴を、Deficit Based Approachでやると、追い込まれていきます。

「なぜできてないんだと思う?」

「何が足りないんだろう?」

「どうして失敗したんだろうね」

なんて尋ね続けられたら、落ち込みませんか。

上司がコーチング研修を受けてきたことで部下にうつ病が発症した、なんて冗談のようなホントの話があるくらいです。パワハラをされてると言われてしまう可能性も高いわけです。

 

前向きな発言を増やす

上司がStrength Based Approachのスタンスで

「すでにできていることは何かな」

「何を手に入れたらうれしい?」

「うまくいってる部分を教えてよ」

「成功させるためにするべきことを5つあげてみようよ」

などと言ってもらえたら、部下はとても前向きに、そして機嫌よく、集中して仕事と向き合うことができるのではないでしょうか。

前向きな発言を増やすことで、パワハラがなくなるだけでなく生産性もあがるということをぜひ腹落ちさせて、部下とのコミュニケーションスタイルを変えて下さい。

参考文献:

『ポジティブ・チェンジ 主体性と組織力を高めるAI』ダイアナ・ホイットニー他著 ヒューマンバリュー

この記事を書いた専門家

豊田 直子
豊田 直子㈱ホリスティックコミュニケーション
◆資格:
臨床心理士、CDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)
第1種衛生管理者、国際TA協会認定CTA(Certified Transactional Analyst)

◆所属学会等:日本産業衛生学会、日本産業ストレス学会、日本産業カウンセリング学会、日本交流分析学会、国際TA協会

◆得意分野:
働く人への短期療法的カウンセリング、TAカウンセリング
ラインケア・セルフケア研修、コミュニケーション研修、人事部門・健康管理部門へのメンタルヘルスコンサルティング