怒りのコントロール ~ アンガーマネジメント

突然ですが、感情ってある意味厄介なものです。感情に振り回されると冷静に思考が動かなくなりますし、下手をすると行動もおかしくなって、最悪、自傷他害の行動が発生します。ハラスメントの背景に感情があるのは確かです。

しかし、一方では豊かな感情があるからこそ人間なんです。そこで大切なのは、自分の感情に気づき、それをうまくコントロールしながら表現できるようになることです。

 

特にマイナスの感情をうまく相手に伝えることは、日本人って苦手な人が多いように思います。腹が立つ・くやしい・悲しい・不安だ・・・などのマイナスの感情を言葉に出すことで人は、少しその感情と向き合うことができるのかもしれません。

怒りをコントロールする、アンガーマネジメント

Ⅰ.自分の感情に気づく・・・本当に怒ってるの?

一言で怒りの感情と言ってもいろんなレベルとか種類があります。某英語の本に感情についての文言が羅列されていたので、怒りについてのそれを日本語訳してみると、憎い・敵意・面倒くさい・欲求不満・いらいらする・憤慨・軽蔑・反発・うんざり・不機嫌・嫉妬などと書かれていました。怒りの感情なのか?と思うような単語もありますね。

 

感情が厄介なのは、TA心理学ではラケット感情(代替え感情)と言いますが、本当は悲しいのに怒ってるとか、本当はうらやましいのに怒りの感情を抱いているなど、本当の気持ちとは異なる感情を我々は持つ時もあるんですね。

 

私たちは、感情さえも育ってくる中で訓練を受けます。

例えば小さい子どもが友達とけんかをして泣きながら帰ってきたとします。親は「大丈夫?」などと心配そうに声をかけるかもしれません。ところがある時、けんかをして帰って来た時にプンプン怒りながら帰ってくると親が心配そうな顔をせず、ちょっと明るい顔で「〇〇ちゃん、元気だね。」などと声をかけたとします。小さいその子どもは、そうか、友達とけんかをして悲しい時でも怒ると親は安心した顔をしてくれるんだと思うかもしれません。そうするとその子は悲しい時に怒りの感情を出すようになるのです。

 

怒りの感情の裏にあるいろんな気持ちや価値観(準拠枠)に気づくことが大切です。怒りは「何か問題がある」という気持ちの上でのメッセージですし、ある意味とてもエネルギッシュな「何かを変えよう」とする活力です。だから怒ることが問題だと思わないでください。

 

むしろ、怒ることができない、怒りの感情を禁止されて育つ方が課題かもしれません。「何か問題がある」ことに気づけず、どんどん自分を追い込んでいってしまう可能性があります。

 

さて、怒りの背景にどんな気持ちや価値観(準拠枠)があるかですが、ハラスメントにつながる働く人に多く発生するのは以下の3つではないでしょうか。

1.恥をかかされたと思うときの怒り

2.正しくないと思うときの怒り

3.とにかく嫌いと思うときの怒り

 

これらを説明するのに、TA心理学のライフポジションという考え方を用いて説明しようと思います。人は自分や他人に対する価値観を幼い時に身につけます。そのスタンスは4つあります。

I’m OK You’re OK(OK-OK)

I’m not OK You’re OK(not OK- OK)

I’m OK You’re not OK(OK-not OK)

I’m not OK You’re not OK(not OK- not OK)

ここで言うOKとは、「正しい」ということではなく「あり」ということです。

上記のどれか1つをライフポジションとして身につけた我々は、普段はOK-OKのスタンスにいることができますが、ストレスフルになるとどこかがnot OKになって、そのポジションに特有の態度をとるようになります。

 

1.恥をかかされたと思うときの怒り

恥をかかされたと思うときの怒りを感じやすい人は、自分に自信がない、つまりI’m not OK You’re OKの人に多いように思います。

心理学用語で言うと自己効力感とか自己肯定感が不足している状態ですね。「自分には価値がない」「自分はくだらない人間」「誰も自分を愛していない」「自分が悪い」「自分はうまくできない」などと考える傾向はありませんか?
それらが強いと、例えば「君が提出してきたこの書類、意味がわからないよ」と言われたときに、心の中のライフポジション翻訳機によって「君は意味のわかる文章を書くことができない人間だね」となってしまい、怒り出すわけです。

OK-OKでいれば、つまり自分に自信があれば、「どの部分の意味がわかりませんか?」と尋ねることができるんですよね。

2.正しくないと思うときの怒り

正しくないと思うときの怒りを感じやすい人は、他人を許せない、つまりI’m OK You’re not Okの人に多いように思います。

正論で相手を追い詰めてしまうわけです。例えば指示通りの仕事をせずにトラブルを引き起こした部下に「なぜ、指示通りにしなかったの?」「なぜ、こんなやり方をしたの」となぜなぜ攻撃をしてしまいます。
相手には相手の考えがあり、正しいとか間違っているとかではなくその考えを尊重できるといいのですが、とにかく間違った行動・言動は許せなくなる、逆に言うと、自分が間違った行動をしていると思うとこれまた身動きがとれなくなり、優秀な部下をさらに育てるためのアプローチができなくなります。

相手の行動や言動すべてに相手の道(タオ)(前章参照)があると思って、まずはそれを受け止めてみるこころの余裕を持ちたいですね。

 

3.とにかく嫌いと思うときの怒り

とにかく嫌いと思うときの怒りを感じやすい人は、行き止まり、と言いますか、無為、と言いますか、より良い方向にむくことができなくなる、つまりI’m not OK You’re not OKの人に多いように思います。

解決をする気力がないと言いますか、自分も嫌いだけど相手も嫌い、好きな人は誰もいない、ということで、とても生きにくいだろうなぁと筆者は思います。

まずは自分を好きになるようにしませんか。そして、小さなことからでいいので生きているこの世界の中の良いこと、好きなこと、ポジティブなことを言語化してみるという訓練から始める必要があるように思います。「山の緑がきれいだな」「呼吸がうまくできているな」「仕事があるって幸せなことなんだな」「家族に感謝だな」等、日々を機嫌よく生きることができると、「嫌悪感」というやっかいなスタンスから距離を置くことができるようになるかもしれません。

 

Ⅱ.怒りの感情をコントロールする

自分がどんな背景で怒っているのか気づいたら、コントロールが必要です。これも人それぞれでいいと思います。

 

まずはOK-OKのスタンスに戻る必要がありますね。それには心の余裕がいります。

 

そして、アンガーマネジメントのいろんな本には6秒ルールとか10秒ルールとか書いてあります。怒りのピークは6~10秒なので、その間行動や言動をしないとアンガーマネジメントがしやすくなるそうです。

 

実は筆者はこのルール、無理ですねぇ。怒りの感情を感じたらその日は1日中その件について怒っていることが多いです。なので、筆者のコントロールの仕方は、「怒りを感じた相手や出来事には、日を改めて対応する」です。メールなども、怒りを感じてしまったら、その日のうちに返信すると大トラブルに発展することが多いので、数日おくこともあります。

 

それぞれの方が自分の怒りの感情をうまくコントロールすることが重要ですね。

 

Ⅲ.怒りの感情をうまく表現する

怒りの感情を持っていることを相手に伝えることが必要なことはあります。しかし、怒鳴るとか厳しい言葉を発するとかはする必要がありませんね。

おだやかな態度と声で、「君のその行動、ちょっと腹が立ったよ」と冷静に伝えればいいですよね。

 

自分の感情の責任は自分にあります。相手の感情は相手の責任です。お互いがお互いの感情を尊重することは必要ですが、相手の感情をなんとかしようとしたり、自分の感情を相手を使っておさめようとしたりするのは、依存的なスタンスだと思います。

 

自分の感情を自分や相手にぶつけて解消しようとしている自分に気づくことができるといいですね。

 

ハラスメントない職場づくりのために

厚労省「職場におけるハラスメントの防止のために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
については、すでにどのお会社でもご覧いただき、社内での「ハラスメント研修」などでお伝えになっていますね。
しかし、「やってはいけない」ことはたくさん書いてあっても、「どうしたらいいのか」を教えてところは、なかなかないのが現実です。

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この記事を書いた専門家

豊田 直子
豊田 直子㈱ホリスティックコミュニケーション
◆資格:
臨床心理士、CDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)
第1種衛生管理者、国際TA協会認定CTA(Certified Transactional Analyst)

◆所属学会等:日本産業衛生学会、日本産業ストレス学会、日本産業カウンセリング学会、日本交流分析学会、国際TA協会

◆得意分野:
働く人への短期療法的カウンセリング、TAカウンセリング
ラインケア・セルフケア研修、コミュニケーション研修、人事部門・健康管理部門へのメンタルヘルスコンサルティング