ゲシュタルト療法での基本的なアプローチ「気づき」

前回は、ゲシュタルト療法の‘気づき(awareness)’について、お話しました。

ゲシュタルト療法では、‘気づき(awareness)’が基本的なアプローチとなります。

パールズによれば、気づきは、内部領域の気づき、外部領域の気づき、中間領域の気づき、という3つの領域に分けられます。

気づきの3つの領域

①からだの気づき

まず、内部領域の気づきとは、簡単に言えば『からだの気づき』です。

「水を飲みたい」ことに気づくのは、からだに様々なサインが送られてくるからです。

水分が欠乏すると「喉が渇く」「唇が乾く」とか、筋肉が疲労すれば「肩が凝る」「腰が痛む」などの‘からだのサイン’に気づきます。

また、呼吸などのように自然に起きていることにも気づくことが出来ます。

呼吸に意識を向けると、鼻で、またはお腹で呼吸していることに気づきます。

さらに、内部領域の気づきのもう1つの特色は、心、気持ち、感情、気分と呼ばれている精神領域の気づきです。

ゲシュタルト療法では、身体と精神を分けることはありません。

心で感じたことは、身体から分離されることは無いのです。心で感じたことは身体に表れるからです。

嬉しいと心で感じた瞬間に笑顔として身体に表れます。

このような意味で「からだ」とは、身体=精神なのです。内部領域での気づきは、心理的なことに限らず、姿勢や動作、表情なども含まれます。

②現実の世界の気づき

外部領域とは、現実の世界のことです。自分を取り巻く「環境」のことです。

人は、皮膚によって外部領域の世界から身を守ります。皮膚という境界線が存在することで「私」には、「私=内部領域」が存在します。

個体は、内部領域の欲求(水分、栄養、酸素)を満たすために目で見る(視覚)、耳で聞く(聴覚)、鼻でかぐ(嗅覚)、舌で味わう(味覚)、皮膚で触れる(触覚)という5つの感覚機能を使って、外部領域=現実の世界にコンタクト*する必要があります。

それ以外の方法や機能で補給することは出来ません。

同じように。精神的な欲求を満たすためにも、外部領域=現実の世界にコンタクトしなければ欲求は満たされることがありません。

人との会話(視覚・聴覚など)、愛情を求める(視覚・聴覚・触覚など)など、五感を総動員しなければ満足感を味わうことが出来ません。

*コンタクトとは、一般には、「触れる」「接触」「接点」などを指します。

ゲシュタルト的には、自らの内界や外界と、どのように関係を持っているか、その関係の仕方をいいます。

③思考の気づき

中間領域とは、思考プロセスのことです。考えたり、分析したり、原因を探したり、合理的な判断をしたり、過去のことを思い出したり、未来のことに思いを巡らすことが出来るのは、脳の特色です。

知識とは、外部の情報や価値観です。人は、小さい時から外部の情報を取り入れて成長します。

「女の子は、そんなことしてはいけません」「男は、人前で泣くな」「有名大学に入れば、社会で成功できる」などなど、切りがありません。

よって、知識を増やすほど、自己を見失ってしまう傾向となります。

また、パールズは、「脳の機能は、現実について想像することができる」ということも指摘しています。

そのため中間領域を「想像の領域」とも表現します。例えば、相手が私をジーとみているとします。

相手は「私を見つめている」だけかもしれません。あるいは、「何かに気を取られていてボーとしている」のかもしれません。

しかし、「私」は「睨まれている」「怒っているのかしら」と思います。

ここには、現実とコンタクトしていないため、今までの知識を総動員して現実について想像している状態となっているのです。

3つの領域の気づきに意識が向くようになると、新しい自覚が生まれます。

自分が「今-ここ」において、現時点で何をしているのか、自分に何が起きているのか、に気づくようになります。

ここから自己への洞察が深まっていきます。