ストレス研究の父 ハンス・セリエ

医学や生理学の領域で初めて「ストレス」を使ったのは、「ストレス研究の父」と呼ばれるハンス・セリエであると言われています。

セリエは医学生の頃、病気は異なっても、患者に共通する「いかにもだるそうな消耗した状態」に関心を持ちました。すなわち生体にいろいろな刺激が加わっても、その原因の如何にかかわらず共通して生じる生体反応(胃・十二指腸の潰瘍化、胸腺に萎縮、副腎の肥大化)の存在に注目しました。

 

その後、セリエは実験動物のラットに、毒性のある薬物投与や寒さにさらしたり拘束する等さまざまな外部からの刺激を与え、生体反応を観察しました。すると、ラットは外部の刺激にかかわらず、ラットの生体には時系列によって共通した変化が認められました。この発見をセリエは1936年、科学誌「ネイチャー」に論文を発表しました。この時セリエは、ストレスという用語が物理学用語であることから、ストレスに反応して生体が起こす一連の反応を「汎適応症候群」と表現して説明しました。

セリエの汎適用症候群 3つの段階

セリエの汎適用症候群の時系列変化は、3つの段階からなります。

生体の最初の変化として①警告反応期があり、ショック相と言われるストレッサーによるショックに身体が適応できていない状態が数分から1日程度継続します。次に反ショック相と言われるショックに対する生体の防衛反応(適応現象)が働き始める段階に進みます。ショック相では、血圧・体温・血糖値の低下、意識の低下、血液の濃縮、筋緊張の低下、脊髄反射の減弱、急性胃腸潰瘍の発生の変化が現れます。反ショック相では、血圧・体温・血糖値の上昇、副腎肥大、胸腺リンパ組織の萎縮、筋緊張の増加の変化が現れます。

次の②抵抗期は、ストレスに耐えて適応するようになる時期で、症状がなくなり、抵抗力も回復して正常な状態に戻ったように見えます。

さらにストレスが続くとストレスに適応するためのエネルギーが徐々に消耗され適応力が低下しショック相に似た状態に陥る時期である③疲憊期(ひはいき)に突入します。この時期は、体温の低下、胸腺やリンパ節の萎縮、副腎皮質の機能低下の変化が見られます。身体の諸器官が協調的に機能しなくなって生体の恒常性が失われる時期であり、死亡するおそれもあります。

 

健やかに生きるための鍵「適応能力」

セリエは、適応能力が健やかに生きるための一番の鍵になる、と言っています。人は生きている限りストレスがない状態などはあり得ません。機嫌よく元気に生きるためには、ストレスにいかにうまく適応するかにかかっています。

私たちの身体には、ストレスに対して生命を維持しようとして全身で適応していこうとするメカニズムが備わっています。①警告反応期を経て、環境の変化に適応した②抵抗期の時期において、継続したストレスに対して自分の生体反応に気づき対処していくことで、③疲弊期に入らないよう防いでいきましょう。

<参考図書>1.永岑光恵,「はじめてのストレス心理学」,岩崎学術出版社,2022.9.15

 

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この記事を書いた専門家

西島雅之
西島雅之㈱ホリスティックコミュニケーション
◆資格:
日本臨床心理士資格認定協会認定 臨床心理士第38621号
キャリアコンサルタント 登録番号 17063746
精神保健福祉士 登録番号 第76892号
社会福祉士 登録番号 第210281号
介護福祉士 登録番号 第44160号

◆所属学会:
日本産業ストレス学会
京都府臨床心理士会会員

◆活動状況:
市役所にて精神保健福祉相談員として自殺予防、相談業務に従事し、その後、総合病院精神科にて心理士として医療臨床に従事している。
現在は、ホリスティックコミュニケーション京都ルーム室長として、ストレスチェックや産業臨床に従事している。