自律神経の緊張があるレベルを超えたときに身体に現れる症状

パニックと聞くと、頭が混乱して、わけがわからなくなった状態をイメージされるかもしれませんが、

動悸や息苦しさ、痺れなどの自律神経症状に、突然、襲われるのをパニック発作と呼び、パニック発作がしばしば起こって、日常生活に支障をきたすようになった状態を、パニック障害といいます。

こころと身体は連動するので、気持が不安になり緊張すると、身体すなわち自律神経も同じように緊張します。

自律神経の緊張は、あるレベルを超えると、何らかの症状を出現させます。

例えば、驚いたり、怖かったりすると、心臓がドキドキしたり、振るえたりします。

テストのときに、おなかが痛くなって、下痢をする人もいます。これらは、自律神経の緊張が、あるレベル(閾値)を超えたときに、身体に現れる症状です。

 

ストレスがあると少しの緊張でも発症してしまう

気持が穏やかなときは、自律神経が、そのレベルを超えて、例えば心臓がドキドキしたとしても、緊張したせいだと、気にすることはありません。

ところが、ストレスがあったり、心配事があったりして、気持ちが緊張していると、自律神経も同様に緊張しているため、少しの緊張でも、症状を出すレベルを超えることがあります。

そのため、自分では緊張を感じないのに、例えば、混んだ電車に乗るだけで、自律神経症状が出てしまうことがあります。それがパニック発作です。

なんでもないときに、突然、動悸がしたり呼吸ができなくなったり倒れて動けなくなってしまったり、救急車で病院に運ばれることもあります。

突然の症状なので、自分の身体に何事が起こったのか、このまま死んでしまうのかなど、怖くてたまりませんが、病院の診察では、心臓や肺など、内科的には異常がないといわれます。

でも実際に死ぬほどの症状があったのに、何も異常はないといわれても、納得できませんし、安心もできません。

今の医学ではわからない病気なのではないかと、名医を求めて、医者を転々とする人もいます。

何かわからない重い病気ではないか、症状を繰り返しているうちに、取り返しのつかない状態になって死んでしまうのではないか。

ひょっとして自分は精神病なのかなど、さまざまな不安が、さらに緊張を高めることになります。

はじめの発作は、何らかの精神的なストレスがたまったり、重なったりして、緊張のレベルが上がっているときに、たまたま緊張が高まって、症状を出すレベル、閾値(しきいち)を超えて出現しますが、一度発作が出ると、それ以後は、身体や死への不安が積み重なり、緊張のレベルがさらに上がります。

そこに、発作が出たらどうしよう、発作が出るのではないかという予期不安が加わるため、ちょっとした緊張で、容易に閾値を越えるようになり、発作が頻発するようになって、パニック障害となります。

最近芸能界でも、パニック障害の治療に専念するため休業との話がありましたが、外出できなくなったり、日常生活に大きな支障をきたします。

内科的、身体的に異常がないといわれると、パニック障害の経験のない人は、たいしたことないと考えがちですが、パニック障害で出現する症状は、実際に身体の病気で出る症状と同じ苦痛をもたらします。

原因がわからないという不安があるため、より苦しいかもしれません。

さまざまな器官に症状が出ることも

自律神経の症状なので、さまざまな器官に症状が出ます。心臓、循環器に関係するものであれば、頻脈や不整脈、さらには狭心症の発作と同じ症状が出る人もいます。

呼吸器系であれば、息苦しい、呼吸困難、ひどくなると過呼吸が出現します。神経筋肉系であれば、震え、しびれ、脱力、頭痛など、さまざまな症状が出る可能性があります。

ぐるぐる回るめまいを感じる人もいれば、船から下りた直後のようなフワフワした感じになる人もいます。

自律神経の症状なので、一つの症状ではなく、いくつかの症状が重なる人もいますし、症状が転々と他の器官に移っていく人もいます。

治療において最も重要となるのは、予期不安を、いかに軽減し、なくすかということです。

そのためには、まず、自律神経症状であり、心臓、肺、胃腸など臓器の病気ではないので、命に別状はないと、どれだけ思い込めるかがカギになります。

パニック障害の一番の治療薬は「安心」

実は、私も、30年位前になりますが、仕事中突然、心臓をつかまれたような苦しさのため、床に崩れて、しばらく動けなくなったことがあります。

循環器内科を受診し、24時間心電図、超音波などの検査を受けましたが、異常はなしとのことでした。

しかし、症状は狭心症の発作と同じだとのことで、ニトロを処方され、もし、また発作が起こったときは、救急車で来てくれたら、いつでも当院で受入れるからと、帰されました。

こう言われると、普通のヒトだと、心臓が悪いに違いない、またきっと発作が起こると心配になりますよね。

しかし私は、パニック障害の方をたくさんみてきていたおかげで、異状がないと言われて、心臓は大丈夫、命に別状はないと安心できたため、パニック障害にならずにすみました。

年に1回程度、何かストレスが重なったときに、パニック発作は起こりますが、ちょっと疲れているのかなと思って、発作を気にせずにいると、発作が続くことはありません。

発作が起こったときは、命にかかわる病気の可能性もあるので、まずは、診察、検査を受ける必要がありますが、そこで異状がないといわれたら、検査結果を信じて、命にかかわる病気ではない、何かストレスがあるのか、疲れているせいだと、気にしすぎることなく、安心することです。

パニック障害の一番の治療薬は安心です。

病院で薬を処方されたら、この薬をのめば発作は止まる、発作は起こらないと思えると、薬を持っているだけで安心でき、発作は出にくくなります。

飲んだり食べたりすることも、不安と相反することなので、車を運転するときは必ず缶コーヒーを運転席に置いているという人や、電車に乗るときは飴をなめているという人もいます。

リラクゼーションも不安とは拮抗するので、自律訓練法など自分なりのリラクゼーションの方法を持つなど、自分なりの安心アイテムをたくさん見つけてください。

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この記事を書いた専門家

圓山一俊
圓山一俊㈱ホリスティックコミュニケーション
◆資格:
日本臨床心理士資格認定協会認定 臨床心理士第1716号
日本催眠医学心理学会認定 認定催眠士第21号

◆所属学会:
日本催眠医学心理学会
奈良県臨床心理士会会員

◆活動状況〈得意分野〉:
国立病院機構やまと精神医療センター心理療法士として35年、医療臨床に従事する。その後、奈良県介護・福祉人材定着支援事業、紀伊半島大水害被災者支援、大和郡山市市民相談など、臨床心理的地域援助活動に携わり、現在は、ホリスティックコミュニケーション奈良カウンセリングルーム室長として、産業臨床に従事している。

◆主な実績:
登校拒否に関する社会医学的研究で医学博士を取得。その他、神経筋肉系心身症や不安神経症の心理学的治療、介護労働者の介護負担、統合失調症の認知などに関する研究に従事し、研究論文を発表している。