お久しぶりです。ゲシュタルト療法の3回目です。気づくシリーズの今回は、「“いま-ここ”の問題に気づく」についてお伝えします。
ゲシュタルト療法には、「未解決な問題(unfinished business)」という概念があります。未解決な問題は、「いま-ここ」のあなたに影響を与えます。
もし、あなたが喉の渇きに気づけば、水かお茶などを飲むでしょう。
夕方であればビールを飲みたいとお店の前で足を止めるかもしれません。
このように、生物は自らの欲求に気づき、それを満たすための行動をとります。ところが、その欲求が満たされないとどうなるでしょうか。
この欲求が満たされないレベルを「未解決(未完了)」といいます。その満たされない状態が続くと、未解決な状態を完結させるために、欲求はさらに強くなります。喉の渇きが満たされない状態が続くと、人の飲み物が欲しくなったり、場合によっては取ってしまったりするかもしれません。あるいは、イライラしたり、ちょっとしたことで怒り易くなったり、普段なら何でもない事なのに、相手を責めるようなことを言ってしまったりします。
このように満たされない欲求は、精神的にも影響を与えたりして、人間関係のトラブルの原因にもなります。この欲求が未解決なままでいる状態を「未解決な問題」と呼びます。
しかし、この「未解決な問題」に気づくことで、人間関係やコミュニケーションが良くなります。時には、身体の症状に影響することもあります。もし、日常の仕事、家庭、学校の中で突然浮かび上がってくる未解決な欲求が「父親の怒った顔」「母親の嘆く声」「子供の頃のいじめの場面」であったとしたら、本人は、いつも何かに怯えてしまいます。自分の感覚や人間関係にも気を使うようになるでしょう。これが「未解決の問題」なのです。それに気づくことができれば、解決するための方法に立ち向かうことができます。ここで事例を紹介します。
Aさんは、OLです。上司が変わってから、職場に行くと「最近、頭が締め付けられ、耳鳴りがして、目の上から幕が下りてくる」ようです。そのことを話している時は、呼吸も浅くなっています。ゲシュタルト療法では、このような場面に焦点を当てます。Aさんが職場に着いて「目の上から幕が下りてくる感覚」について再体験してもらいます。呼吸にも意識してもらいます。しばらくすると、子供の頃のある場面が思い出されました。子供の頃、父親に反抗して「生意気だ」と叱られ、それでも文句を言ったら、殴られた場面がパッと目の前に浮かび上がって来ました。そして、上司は、父親に似ていたのです。上司に近づくと怖いという感覚を麻痺させるために顔を緊張させます。そして、目の上から幕を下ろし、呼吸を止めて「耳鳴り」を作り上げて、自分の怖いという感覚から注意をそらしていたのです。上司の顔に父親を重ね合わせ、怖がっていたのです。そして、反抗していた自分は、本当は父親に自分のことを認めてもらいたかったことに気づきます。もしかしたら、上司に対しても自分を認めてもらいたくて、それが上手くいかなかったことと関連しているかもしれません。
このように、特定の人間、異性、事柄などに,いつもより過敏に反応している場合には、本人の「未解決な問題」が知らないうちに影響を与えていることがあります。乱暴な口を利く上司や威張り散らす上司は、周囲の人たちを嫌な気分にさせます。時には耐えられなくなって出社拒否になったり、職場の配置換えの希望を出す人もいるかもしれません。この時、上司も、実は彼が抱えている「未解決な問題」を周囲に向けているのかもしれません。部下に「俺の気持ちがなぜ解らんのか」と怒鳴っているのですが、それは彼を受け入れてくれなかった母親や父親に向かって言っているのかもしれません。
そして、部下は自分の「未解決な問題」を上司に重ね合わせて過剰に怯えたり、憎んだり、避けたり、病気になったりしているのかもしれません。先ずは「“いま-ここ”の問題に気づく」ことから始めてみましょう。

                            

 

文献
・「気づきのセラピー はじめてのゲシュタルト療法」百武正嗣著 春秋社