感情労働場面における表層演技と深層演技
感情労働場面において、労働者には、表層演技と深層演技と呼ばれる2種類の演技が求められます。
演技というのは、職務上適した感情を表現するために、労働者が自分自身の外面的な感情表現の仕方や、内面的な感情を変化させる方法を指します。
①表層演技
その時の状況で実際に抱いた感情を抑制したり、あるいは別の感情を抱いているかのように振る舞うことによって、外面的に望ましい感情表出を行う
例:作り笑い、イライラを隠して笑顔で接客することなど
表層演技をしている時には、あたかもそう感じているように“演じている”だけなので、表情や身振りは「うわべだけのもの」という自覚があります。そのため、内面に生じている自然な感情と表出する感情との不一致により葛藤が生じやすくなります。
②深層演技
その状況や社会的・職業的に望ましいとされる感情をあたかも心の底から感じているように、自己の感情を誘発する
例:顧客とのトラブル時に、相手への申し訳なさを心から感じながら謝罪をすること
結婚式場のスタッフが、祝福する気持ちをもって出席者に対応することなど深層演技による感情の表出は自然な感情の働きであり、幸せそう、悲しそうなど、そう見えるよう努力するのではなく、「自分自身」の中から自分で呼び起こした感情を自発的に表出します。
内面に生じている感情と表出する感情は一致しているため、表層演技のように葛藤が生じることはありません。しかし、深層演技をくり返すことにより、日常生活においても自分の感情を表出する際に混乱を招きやすくなったり、知らず知らずのうちに感情が疲弊してしまう恐れがあります。
~問題~
それぞれどちらの演技の仕方(表層演技か深層演技)で感情をコントロールしているでしょうか?
1.仕事の時は、常に「笑顔でいる」ことを意識している。
2.約束の時間を守らなかったり、自分の仕事を他人に押し付ける上司のことを同僚は嫌っているが、自分としては「あの人はそういう人なんだから仕方がない」と思っている。
3.部下はいつも嫌味を言ってくるので腹が立つが、仕事中は怒りを表に出してはいけないので、笑顔でいるように努めている。
この記事を書いた専門家
- ◆資格:
日本臨床心理士資格認定協会認定 臨床心理士第33487号
◆所属学会:
日本心理臨床学会
奈良県臨床心理士会会員
◆活動状況:
資格取得後、自殺予防に関する相談業務や児童発達支援などの心理業務に携わる。
教育機関や医療機関でのカウンセリング、心理検査などの経験を経て、現在は医療臨床及び産業臨床に従事している。最新の投稿
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