感情労働とは、社会学者であるHochschild(ホックシールド)が1983年に提唱した概念で、

「公的に観察可能な表情と身体的表現を作るために行う感情の管理」と定義されます。

 

これまでの労働形態は、身体を使って賃金を得る「肉体労働」、頭脳を使って賃金を得る「頭脳労働」という2つの働き方が主でしたが、新たな働き方として広まってきたのが、第三次産業である、感情を使って賃金を得る「感情労働」という働き方です。

 

その背景には、1970年代(高度経済成長期)以降の第二次産業から第三次作業を中心とする産業の変化に伴い、サービス業に従事する人が増えたことや、顧客満足の向上を追求する社会的傾向などがあると考えられています。

 

 

 

感情労働が求められる職業には共通する3つの特徴があります。

①対面あるいは声による顧客との接触が不可欠

②相手(顧客)の中に何らかの感情変化を起こさせなければならない

③組織や経営者は研修や管理体制を通じて、労働者の感情活動をある程度支配する

 

これらの特徴から、感情労働を行う労働者にとっては、感情をコントロールすることが仕事の一部とされており、その時々で感じる感情と実際に表現する感情とを調整する必要があります。

つまり、顧客にとって望ましい態度や表情を作って対応したり、その場にふさわしい振る舞いを意識的に行うことが仕事として求められるのです。

 

感情労働での働き方が必要とされているのは、飲食業や販売業などのサービス業、看護師や教員などの対人援助職の方など、主に人と関わる職種の人たちと言われてきました。

しかし、肉体労働や頭脳労働として働く人たちの中でも、顧客と接する機会や感情のコントロールを必要とする職務内容の変化により、感情労働を必要とする仕事が増えてきていると言われています。

 

また、広義の意味での感情労働では、作業の種類にかかわらず、人と人との接触があれば、従業員が感情労働を行う可能性があるとされ、顧客だけでなく、同僚や上司、部下などに対しても感情労働が必要であるとされています。

つまり、労働者はどの職種に就こうとも必然的に感情労働を行うことが求められているともいえます。

 

文献:「管理される心-感情が商品になるとき-」A.R.ホックシールド著 石川唯・室伏亜希訳 世界思想社(2012)

「人口動態職業・産業別統計の概況」厚生労働省(2015)

 

この記事を書いた人は

徳田翔子
徳田翔子
◆資格:
日本臨床心理士資格認定協会認定 臨床心理士第33487号

◆所属学会:
日本心理臨床学会

奈良県臨床心理士会会員

◆活動状況:
資格取得後、自殺予防に関する相談業務や児童発達支援などの心理業務に携わる。
教育機関や医療機関でのカウンセリング、心理検査などの経験を経て、現在は医療臨床及び産業臨床に従事している。