発達障害のコミュニケーションの特徴

発達障害の人は、コミュニケーション全般に苦手意識や困難をかかえる人が多く、周りの人からは、「変わった人」「空気を読めない人」「自分勝手な人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。

コミュニケーションの特徴として、

  • 言葉を話していても、表情が乏しく、声に抑揚がなく一本調子で、身振り手振りがない
  • 暗に言葉にこめた意味を察することや相手の思いを感じ取ることが難しい
  • 具体的でない曖昧な指示や表現を理解することが難しい
  • 暗黙の了解やルールを理解・想像することが難しい
  • 耳から入ってくる情報の処理が苦手なため、視覚情報のほうが理解しやすい
  • 言葉のキャッチボールができない
  • 悪気がなくても、失言や暴言が出てしまう

などが言われています。

 

具体的な行動

これらの特徴から、具体的な行動としては、

  • 「コピーを見てきて」と言われたら、見てきただけで、コピーが終わっているのに、それをもってこない。
  • 遅刻してきたので、「今、何時だ!」と怒ったら、10時ですと答えた。
  • 「体調が悪くて夕食を作れないから、帰りに何か買って食べて」と電話したら、自分の弁当だけ買ってきて、自分だけが食べていた。
  • 「あれ、やっといて」と頼んだのに、何もせずボーっとしている。
  • 15分残業すれば納期に間に合うのに、定時で帰るなど、場の空気が読めない。
  • 口頭で詳しく説明して、わかりましたと答えたのに、全然わかっていなかった。
  • 聞いただけではわからないからメモを取るように言うが、メモを取ろうとしない。
  • 紙に書いたりして説明するとちゃんとやるが、口で言っただけではできないことが多い。
  • 複数のことを指示しても、ひとつしかしない。あるいは、必ずひとつは抜ける。
  • 電話がなっていて、近くにいるのに、電話に出ようとしない。
  • ちょっと覚えた難しい言葉を、日常使う言葉ではないのに、雑談の中でもやたらと使う。
  • やり方を少し間違っている人がいたら、「そのやり方は間違っています」と、ズバッと言ってしまう。

などなど、周りの人をイライラさせる言動がしばしばみられます。これらは、本人に悪気があるわけではなく、やる気がないのでもなく、しつけや教育の問題でもなく、脳機能の障害によるものですと言われても、にわかには理解できないときもあると思います。

 

具体的な例で考えてみましょう…

発達障害の人のコミュニケーションについて、私は、自分がアメリカで仕事をすることになったときを想像するようにしています。

私の英語力では、簡単な短い文であれば、抑揚をつけて話すこともできますが、少し長い、複雑な文章になると、しゃべることに必死で、無表情で、一本調子の話し方になってしまうと思います。暗にこめられている意味を読み取るなんて、ネイティブ並みの英語力がないと無理ですし、生活習慣も育ってきた環境も違うので、暗黙の了解やルールを理解することもなかなかできません。具体的に指示されないと何をしていいのかもわからないことも多くあると思います。

  • アメリカ生活に慣れないうちは、コピーを見てきてと英語で言われたら、よくわからず、コピー機を見に行くだけになってしまうかもしれません。
  • 遅刻して怒られているときに、突然、What time is it now ?と怒鳴られたら、思わず、”10 o’clock”と答えてしまうこともあると思います。想定していないことを、突然聞かれると、機械的な応答になることは、日本語でもあることですから。
  • お客が3人来るから、昼食を用意するように、上司から言われても、アメリカでお客に出すランチは、ハンバーガーなのか、ピザなのか、デリで何か買ってくればいいのか、アメリカの習慣がわからないと、何を用意していいかわからず、何も買いに行けず、呆然としていることもあるでしょう。
  • あと15分ほどで仕事が終わると思っても、残業していいものかどうかわからず、尋ねることができないと、帰るしかないですよね。
  • 英語で長い文章を言われると、だんだんわからなくなって、とりあえずYesと言ってしまうことってありませんか。
  • 英語の話を聞いているときは、聞き取ることだけで精一杯で、メモを取るなんて至難の業ですよね。
  • リスニングで、ほとんど聞き取れなかったことでも、英文を見せてもらえば、相当難しい文章でもわかります。
  • 英語でいくつかの指示をされたら、最初の指示を聞いて覚えることに精一杯で、後は聞けていないかもしれませんし、次の指示を聞き取っているうちに、最初の指示を忘れてしまうということもあると思います。
  • 相当英会話に自信のある人でないと、電話には、できれば出たくないと思いますよね。
  • 何か新しい言葉を覚えたら、難しくかっこいい言葉であれば、ネイティブの人がどういう状況で使う言葉かわからず、使ってみたくて、雑談の中で使うこともあるかもしれませんね。
  • 英語のいろいろな表現を知っているわけではなく、微妙なニュアンスもわからないので、ストレートに表現してしまって、ひんしゅくを買うこともあるのではないでしょうか。

このように、自分が、英語環境の中で仕事をしていると考えると、理解できることも多く、発達障害の人が、単なる自分勝手な、変わった人ではないことをご理解いただけるかと思います。

 

この記事を書いた人は

圓山一俊
圓山一俊
◆資格:
日本臨床心理士資格認定協会認定 臨床心理士第1716号
日本催眠医学心理学会認定 認定催眠士第21号

◆所属学会:
日本催眠医学心理学会
奈良県臨床心理士会会員

◆活動状況〈得意分野〉:
国立病院機構やまと精神医療センター心理療法士として35年、医療臨床に従事する。その後、奈良県介護・福祉人材定着支援事業、紀伊半島大水害被災者支援、大和郡山市市民相談など、臨床心理的地域援助活動に携わり、現在は、ホリスティックコミュニケーション奈良カウンセリングルーム室長として、産業臨床に従事している。

◆主な実績:
登校拒否に関する社会医学的研究で医学博士を取得。その他、神経筋肉系心身症や不安神経症の心理学的治療、介護労働者の介護負担、統合失調症の認知などに関する研究に従事し、研究論文を発表している。