ライフサイクル理論における 「幼児期後期(児童期)」
幼児期後期(児童期)は4才~7才くらいの時期にあたります。
ライフサイクル理論では、この時期の発達課題を「自発性 対 罪悪感」と設定しています。
この時期に子どもの心の中に好奇心や探求心が開発されます。
そしてこれらは、想像/創造の基礎となります。
この時期の子どもは、自ら(外界に)働きかけ、よく動きます。
また、失敗を恐れない/失敗をしてもすぐに忘れる(切りかえることができる)
疲れを知らない/疲れてもすぐに癒される時期とも言われています。
児童期の「自発性」
この時期に、外界に対して繰り返し働きかけることを通じて、幼児期前期に獲得した「自律性」に、「果敢に取り組む」という特質をプラスしたものが「自発性」であると考えられています。
そして新たに得た知識や能力をうまく使えない時、自身が設定した目的や目標あるいは、自身の行為に関して「罪悪感」を抱くと考えられています。
仕事においても「自発性」は、重要で必要不可欠なものでありますが、働く中でこれを育てていくために必要なことを事例から考えてみましょう。
自発性を育てるために (事例検討)
Aさんは現在勤める会社に入社して5年目を迎えました。
実務的なことにも慣れ、部署の中でも自身の求められることが分かってきて、日々意欲的に仕事に取り組んでいました。
Aさんはある日、社外の研修を受講していました。
研修のテーマはセキュリティに関することだったのですが、講師の話から、
「今のパスワードの設定は分かりやす過ぎる。変えた方がいいのではないか」
と思いつきました
Aさんは会社に戻ると早速、部署で共有しているファイルのパスワードを変更すると、そのことを部署のメンバーに報告をして帰宅しました。
土日の休日をはさみ、月曜日に出社をしてメールを確認すると、上司からパスワードを変更したことについてお叱りの返信が来ていました。
メールの文面からも上司の怒りが伝わってきて、Aさんはこの時はじめて、自身が事前に相談をせずにパスワードの変更を行ったことが、組織内でのルールを違反していることに気づいたのでした。
仕事ができる実感が持てるようになると、私もそうですが、自信を持ち、Aさんのように自分なりの課題を見つけて、目的を持った行動が増えていくことが多いのではないでしょうか。
こうした姿は、自発性を獲得した子どものようにエネルギッシュで、頼もしいことですが、Aさんの場合は自発的な行動を取ることができるようになった反面、組織の中であるいは、チームで仕事をしているということに、意識が向きにくくなったのかもしれません。
事例の続きになりますが、Aさんはその後、上司に電話の連絡をして、相談なくパスワードを変更したことを詫び、同じ部署のメンバーにも謝罪をしました。
それ以降、自身の判断で決めていいことと同僚や上司に相談した方がいいことを、吟味するようになっていきました。
上司から叱責のメールが来た時、Aさんの罪悪感は大きかったと推察されますが、この罪悪感は持ってしかるべきものであったのではないでしょうか。
もしAさんの罪悪感がとても深刻なものであれば、自発的に仕事に取り組む姿勢が見えなくなる、自身の意見や考えを表明することがなくなる、指示されたことにだけ取り組むようになってしまう、可能性もあったかもしれません。
子どもの心理社会的発達
子どもの心理社会的な発達の話に戻りますが、幼児期後期の養育者をはじめ、周囲に求められる姿勢として、根気強く認める(見守る)ことが求められます。
この時期の子どもは積極的に、繰り返し外界にかかわっていく中で、一見すると無意味に思えることや、ろくでもないことをしているようなことを行います。
この時、周囲の人が根気強く認めてあげることが自発性を育てる基本要件である、とエリクソンは述べています。
職業人・企業人としての成長
仕事の場において、指導や教育はもちろん必要なことで、
自発的に考えたこと・行動していることを、時には非効率に見えて介入したくなることがあるかもしれません。
しかし時にはその気持ちを我慢して見守ることが、職業人・企業人としての成長につながるのではないでしょうか。
また、今お仕事において思考錯誤をしている方は、自身のアイデアや、「こうした方がよりよいのではないか」といった考えを、抑え過ぎないこと、仮に注意や指導をされても、ある程度の時間反省をしたら、気持ちを切りかえて仕事に臨むことを意識していただけたらと思います。
適度な罪悪感は持ちつつ、自発性を育てていってください。
自発性は次の発達段階である、「勤勉性」につながります。
次回は仕事における勤勉性と劣等感について述べていきたいと思います
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この記事を書いた専門家
- ◆資格:
臨床心理士/公認心理師
日本臨床心理士資格認定協会認定 臨床心理士第18723号
(石川県臨床心理士会会員)
◆所属学会:
日本心理臨床学会
日本児童青年精神医学会
日本学生相談学会
◆活動状況〈得意分野〉:
臨床心理資格取得後、奈良県内の中学校や不登校の児童生徒の通室教室で学校臨床に携わる。
石川県に活動の拠点を移してからは学校臨床に加え、病院臨床(遊戯療法を中心としたカウンセリング・知能/発達検査・うつ病/統合失調症の症状査定)や産業臨床(求職者の方とのカウンセリング)や大学生の学生相談業務に従事する。
株式会社ホリスティックコミュニケーションでは、メンタルヘルスに関する情報提供を行う講師としての活動やストレスチェックに関する業務を担当している。最新の投稿
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