序文

現代は多様性の時代と言われています。

「人と違う」ということは悪いことではなく、一人ひとりの個性を尊重しましょうというのが【多様性社会】の考え方です。

その一方で、社会生活の中で「生きづらさ」や「孤独」を感じる人の割合は高く、「自分は周りとずれているのかも、普通じゃない、社会に馴染めない…」という感覚を持つ方も多いようです。

日本の文化的な価値観として、昔から「空気を読むこと」が重視されていて、今でもその影響が根強く残っているためかもしれませんね。

筆者自身もこれまでに「私は人と違う、ダメな人間なんだ」と感じることがよくありました。

比べても仕方ないと頭ではわかっているのですが、自分と他人を比べて、自信を失くしてしまうんですよね。そして、だんだん、人に迷惑をかけているような気持ちになってくる…。

また、筆者これまで精神科やクリニックで働いてきて、患者さんの中に「自分のことを理解したい」とおっしゃる方がいらっしゃいました。「自分は人と比べてミスが多い気がする」、「集団の中で浮いてしまう」など事情は様々ですが、自分を知りたいという気持ちの背景には「自分は他人と違って、ダメな人間なんだ」という感覚があるようでした。

とある患者さんに心理検査の結果をお伝えしたときに、「今まで、どうして人とトラブルになるのかなって思ってきたけど、初めてその理由が分かった気がします。」とおっしゃられたことがありました。ご自分のことを知ることで、ほっとされたようでした。

私自身も、上手くいかないことがあると、今でも、「他の人はちゃんとできているのに、自分はダメだなあ」とか「変なやつと思われているかも」などと、自分に烙印を押してしまうことがあります。

ただ、色々な体験や出会いを通じて、少しずつ「まあいいか、これが自分なんだ」と自分を受け入れることができるようになってきたと感じています。

以前よりも自分を知り、ありのままの自分を認められるようになってきたことで、「周りから変と思われているかも」という不安も薄れたように思うのです。

「人と違う」「普通じゃない」という受け止め方には、「自分はダメだ」という考え以外にも、「誰からも理解してもらえない」というような気持ち、周囲から否定されているような感覚が含まれていると考えられています。

そのため、「人と違う」「普通じゃない」という考えが強くなると、「自分は一人ぼっちなんだ」という感覚も深まってしまうと思われます。

これらのことから、大切なのは、自分で自分を認めること。

つまり、ダメな自分も、普通じゃない自分も、自分なんだと受け入れること。

その上で、他者との適切な距離がとれることなのだろうと思います。

少しずつ、自分で自分を理解してあげること、受け入れてあげることに取り組んでみませんか。

自分を知ること、ものの考え方や受け止め方を変えていくことは、とてもエネルギーのいる作業です。自分のある一面を知ること、それを受け入れることは怖いことでもあるかもしれません。

もしお一人で取り組むことが難しい時には、専門家と相談することもご検討ください。

このブログでご紹介する情報が、「自分は人と違ってだめだ、周りに馴染めない気がする」と感じておられる方にとって、ご自分についての理解を深めていただくこと、そして、自分らしく生きるということにつながれば幸いです。

自分らしく生きる
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この記事を書いた専門家

小石幸代㈱ホリスティックコミュニケーション
◆資格:
臨床心理士/公認心理師
日本臨床心理士資格認定協会認定臨床心理士 第32849号
公認心理師 第23028号

◆所属学会:
日本心理臨床学会
日本心理学会
京都府臨床心理士会会員

◆活動状況〈得意分野〉:
大学院修了後、精神科病院における心理業務や乳幼児健診の発達相談に携わる。大学の心理臨床施設でのカウンセリングや心理検査を経て、現在は産業臨床と病院臨床に従事している。