1.TA哲学(TA Philosophy)
TAは、哲学を持っている数少ない臨床心理学理論の1つです。その哲学とは
1.人はみんなOKである
2.人は考える力を持っている
3.人は自分の人生を自分で決め、そしてそれを変えることができる
です。これらの哲学を記述者なりに少し解説をいたします。
1.人はみんなOKである
我々は、差別をしがちです。国・人種・肌の色・宗教・性別・年齢・学歴等々・・・しかし、TA哲学では人はその存在そのものがOKなのだと言います。「OK」とは、日本語に直しにくいのですが、私は「あり」だと解説することが多いです。「ありえない」ではなく「あり」です。仕事ができない人も怒りっぽい人も「あり」です。行動については課題があっても、存在は「あり」なんです。そこからスタートすることで自分を大切にできたり、他者を受け止めることが少し楽にできるようになるかもしれません。
2.人は考える力を持っている
管理職研修で時々、「何も考えていない部下に対してどう指導をしたらいいですか?」と聞かれますが、私はこうお伝えすることが多いです。「何も考えていない人はいません。みなさん一生懸命考えておられる、もしくは考えようとされていると思いますよ。しかし、考えるのをやめている人はいるかもしれません。あなたはそういう時ないですか?私はありますよ。例えば上司から理不尽な仕事の与え方をされたとき、言われたとおりに作業をしたとしてもそこに自分の考えを入れないようになりますね。」と。
考える力を活用するということは、何もかもこちらから教えるのではなく、その人に考えてもらうということでもあります。
考える力を高めるということは、自分の人生を機嫌よく元気にしていくためにどうすればいいかを自分で考えていくことでもあります。
3.人は自分の人生を自分で決め、そしてそれは変えることができる
TA心理学では、人は自分の人生をまるで演劇の脚本のように書き込んでいて、その脚本のストーリーに合った生き方をし、発生する出来事を自分の脚本に合うようにゆがめて理解する、と言われます。 破滅的な脚本、不機嫌な脚本、失敗ばかりする脚本等、自分が機嫌よく生きられない方向性を強化している自分に気づき、その脚本を書き換えていくことが大切です。例えば、仕事が終わるまで帰らないことでどんどん過労がたまっていく過重労働をしがちな人は、まずはその生き方を自分で選んでいることを実感として気づく必要があります。そして、過重労働をしたいのかどうか自分に問いかけ、したくないのであれば早く帰るとか有休をとるなど、自分が機嫌よく生きていけるように行動を変えることが大切です。
その行動を変えようとすると、脚本の信条と言いますが、心の中では脚本からはずれないための悪魔のささやきがたくさん発生してきます。
「休みをとるということはさぼるってことだから人間としてよくないよね。」
「僕が働かないと、みんなに迷惑がかかるからやらないとなぁ・・・」
「これが成功しないと会社に大きな損害を与えるし・・・」
などなど。
その脚本の信条にどう抵抗していくかが、自己成長につながるのです。
2.自律性(Autonomy)
TA心理学では、自律性を高めることが心を健康にするために最も推奨されます。自律性が高いということは
気づき(awareness)
自発性(spontaneous)
親密性(intimacy)
の能力を使うことができている状態です。
気づきとは、自分がどう生きたいのか、今それに対して何が問題なのか等、自分が機嫌よく生きることができていない理由に気づくということです。私たちは、子どもの時からいろんな体験をする中で、もう何も考えずに目の前の体験に対して行動を起こしたり、感情を持ったり、理屈をつけたりします。それが機嫌よく生きるのに役立っているならいいのですが、往々にして機嫌よく生きられない原因をつくりだしています。まずはそんな自分の思考・感情・行動を意識化すること、これは気づき(awareness)ということになります。
自発性とは、自ら選ぶということです。我々は他者や環境からいろんな影響を受けます。その影響をそのまま受けているとメンタルヘルスが不調になりやすいです。その状況が変わらないのであれば、その状況に向かう自分のスタンスを変えることが大切です。例えば、隣の席の人の香水の匂いが気になるというとき、「気になる、気になる」と思っているとどんどん気持ち悪くなりますが、「気にしない」と決めて、それでも気になることもありますが、そのたびに自分で「気にしない」と選ぶ。そのうちあまり気にならなくなるかもしれません。あるいはそれでも気になるなら、その人に「もう少し香水を減らしてくださいませんか」と頼むことを選べることが大切です。
親密性とは、表面上仲がいいということではありません。お互いが率直な関係で尊重しあいながら本音で話し合えるということです。人間は感情を持っていますから、お互いのコミュニケーションで嫌な思いをすることはあります。それを恐れて表面上仲良くしていると、実はどんどん疎遠になっていくことが多いようです。嫌な顔もするし、ちょっとしたけんかもするけど、お互いがお互いを大切に思っているということを伝えてさらにかかわっていくという関係性が親密性と言えるでしょう。アサーティブネスと深く関係していると思われます。
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